代襲相続とは何か?

代表社員弁護士 伊藤 弘好 (いとう ひろよし)

代襲相続とは、法定相続人が相続開始時(被相続人死亡時)に既に死亡しているとき、その子などが死亡した法定相続人の相続人としての地位を引き継ぎ、死亡した法定相続人に代わって相続をするという制度のことです。

代襲相続が開始する条件

代襲相続は、法定相続人が①死亡、②欠格、③廃除のいずれかによって、相続開始時に相続人ではなくなっているときに開始します。
このうち、①死亡は、文字通り死んでしまったことです。親より子が早く死亡したことから、孫(死亡した子の子)が代襲相続するようなケースです。また、被相続人と相続人が同時に死亡したケースであっても(死亡時期の前後が不明であれば、法律上は同時に死亡したものとみなされます)、死亡した相続人の子が代襲相続することになります。
つぎに、②欠格とは、民法891条に列記されています。具体的には、被相続人や他の相続人を故意に死亡させたり、死亡させようとして刑に処せられた者、被相続人が殺害された事実を知りながら告訴告発をしなかった者、詐欺や強迫によって遺言を作成・撤回・取消し・変更させた者、遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者のことです。
そして、③廃除とは、遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対し、虐待・重大な侮辱・その他重大な非行をしたことです。このうち「重大な非行」とは、推定相続人が配偶者や養子のときは、「婚姻ないし養子縁組を継続し難い重大な事由」が認められるときであると考えられますので、推定相続人が実子のときにも「婚姻ないし養子縁組を継続し難い重大な事由」と同程度の重大な違法性が認められる必要があると考えるべきでしょう。
廃除の具体的なやり方ですが、被相続人がその生前に家庭裁判所に請求して行うほか、遺言でも行うことができます。遺留分を有さない推定相続人が廃除の対象外とされている理由は、廃除をしなくても遺言で相続分をすべて剥奪することができることからです。
なお、欠格や廃除は、被相続人の死亡後になされたときでもさかのぼってその効果が発生し、対象となった推定相続人は最初から相続人ではなかったものとして取り扱われることになります。

相続放棄をしても代襲相続は発生しません

代襲相続が発生する条件は、推定相続人の死亡、欠格、廃除のいずれかに限定されます。したがって、推定相続人が相続放棄をし、さかのぼって相続人ではなかったものとして取り扱わるとき、相続放棄をした者の子は相続人にはなりません。

代襲相続する者の条件

代襲相続する者は、代襲相続される者(被代襲者)の直系卑属でなければなりません。したがって、相続人が直系尊属のとき(被相続人に子がいないときは、直系尊属が第2順位の相続人となります)、被相続人の母は生存しており、父は既に死亡していたものの父の母(祖母)は生存しているとき、祖母は父を代襲相続することなく、相続人は被相続人の母だけとなります。
なお、被相続人の子の配偶者の連れ子は代襲相続をすることはできませんが、被相続人の子が死亡する前に配偶者の連れ子と養子縁組をしていれば、被相続人の子の配偶者の連れ子は被相続人の子を代襲相続することができます。
また、被相続人が養子にした子が養子になる前にもうけた子は、被相続人の死亡した養子を代襲相続することはできません。これに対し、被相続人が養子にした子が養子になった後にもうけた子は、被相続人の死亡した養子を代襲相続することができます。
これらの違いは、被相続人の養子の子が出生した時点で、養子と被相続人との間の親子関係が存在したかどうかという点です。すなわち、被相続人が養子にした子が養子になる前にもうけた子は被相続人とは無関係な子であるのに対し、養子にした子が養子になった後でもうけた子は被相続人の孫といえるからです。

子の代襲者に制限はないが、兄弟姉妹の代襲者は甥姪まで

子の代襲者は、まず孫、孫が死亡していた時はひ孫というように、制限なく6親等まで代襲相続されます(子の1親等、孫は2親等、ひ孫は3親等です)。
これに対し、兄弟姉妹が相続人であるときの代襲者は、兄弟姉妹の子(被相続人から見たときの甥ないし姪)までとなります。甥ないし姪の子には代襲相続されません。

お困りの際は弁護士相談を

被相続人が遺言を作成することなく死亡したとき、その相続財産の名義を被相続人名義から変更するためには、相続人全員が参加して遺産分割協議を成立させる必要があります。
相続人となるべき人が被相続人よりも前に死亡していたとき、代襲相続が始まる場合と始まらない場合とがあります。代襲相続が始まる場合には、代襲相続人を参加させた遺産分割協議を行う必要がありますが、親戚づきあいの縁が薄い場合など、自分たちではうまく話し合いができない場合もあるかもしれません。そのようなとき、弁護士を代理人に選任し、ご自身の代わりの交渉窓口になってもらえば非常に気が楽ですし、ご自身の法律上の権利を守ることもできます。
そこで、相続関係でお困りの際は、弁護士に相談することをご検討ください。当事務所は初回の30分の相談を無料としておりますので、費用のご心配をせずに弁護士相談をお受けいただくことができます。皆さまからの法律相談のご予約のお電話をお待ちしております。