【特別代理人】未成年者や胎児がいるときの遺産分割協議はどうする?

相続人の中に未成年者や胎児がいるとき、遺産分割協議はどのようにしたらよいのでしょうか? 

未成年者が相続人のとき

未成年者が相続人のときは、法定代理人(親権者がいれば親権者。親権者がいないときは未成年後見人)が未成年者を法定代理して遺産分割手続に関与することになります。しかし、法定代理人が相続人でもあるとき(例えば、被相続人の妻と子が相続人であるとき)は、未成年者との利益相反が問題となります。ここで利益相反とは、行為の客観的性質から利害の対立を生じるおそれがあるときをいい、現に対立関係にあるかどうかや現実に利害が対立する結果となるかどうかは考慮されません。したがって、上記の具体例でいえば、被相続人の妻が妻自身の利益よりも我が子の利益を優先する固い意思に基づいて子を法定代理して遺産分割協議を成立させ、現実に成立した遺産分割協議が妻の利益よりも子の利益を優先したもので子に不利益は全くないものであったとしても、それは利益相反行為となって遺産分割協議は無効となります。

法定代理人と子の利益が相反する関係にある場合は、法定代理人は、家庭裁判所(未成年者の所在地の家庭裁判所となります)に対し、未成年者のための特別代理人の選任審判を申し立て、選任された特別代理人に遺産分割協議に加わってもらわなければなりません。通常は、公務員等の職業についている信頼できる親族を特別代理人候補者として特別代理人選任審判申立書に記載しておきます。この点について、最高裁判所昭和35年2月25日判決は、父母の一方に利益相反関係があるときは、利益相反関係のない親権者と特別代理人とが共同して子のために代理行為をする必要があるとの判断を示しています。また、最高裁判所昭和48年4月24日判決は、親権者と子の間に利益相反関係がないケースについて、親権者において数人の子のいずれについても衡平さを欠く意図がなく、親権者が実際にした代理行為によっても数人の子の利害が対立する結果にはならなかったとしても、親権者が数人の未成年者を法定代理して行った遺産分割協議は無効であるとの判断を示しました。なお、最高裁判所昭和49年7月22日判決は、このようなケースでは、親権者によって法定代理される1人の未成年の子を除いた他の未成年の子について、それぞれ別の特別代理人を選任して遺産分割協議を行わなければならないとの判断を示しています。

胎児が相続人のとき

民法886条は、胎児がいるときは既に生まれたものとみなすとした上で、胎児が死体で生まれたときはこの規定を適用しないとしています。そこで、古くからこの条文の解釈が争われてきました。まず、胎児の相続能力は認めないものの、胎児が生きて生まれることを停止条件として相続開始時にさかのぼって相続能力を取得するという解釈です(停止条件説)。これに対し、胎児の相続能力を認め、胎児が死体で生まれたときは相続開始時にさかのぼって相続能力を取得しなかったものとするという解釈もあります(解除条件説)。

両説の最大の違いは、解除条件説によれば、胎児の母が胎児の法定代理人となって胎児のために遺産分割協議を行うことができるという点です。しかし、解除条件説であっても、胎児の出生前には相続関係が未確定の状態にあるため遺産分割はすることができないという見解を唱える学者もいます。また、停止条件説によれば、胎児は生まれるまで相続能力がありませんので、胎児を参加させないで遺産分割協議を有効に成立させることができますが、胎児が生きて生まれると、いったんは有効に成立したはずの遺産分割協議は無効となります。

学説上は解除条件説が有力です。また、判例ですが、最高裁判例はなく、戦前の大審院昭和7年10月6日判決(母が胎児を法定代理して損害賠償請求をすることはできないとの判断を示したもの)があるだけです。結局のところ、民法886条の解釈に決定的なものはないことから、実務上は、胎児の出生を待ち、胎児が生きて生まれれば、その親権者(親権者が利益相反関係にあるときは特別代理人)が元胎児(生きて生まれた子)を代理して遺産分割協議に参加し、胎児が死産であれば、胎児の存在は無視してその他の相続人で遺産分割協議を行うことになります。

困ったら弁護士に相談を

最高裁判所は、相続人の中に未成年者がいるとき、未成年者の利益を保護するため、原則として特別代理人を選任することを求めています。また特別代理人の選任審判申立書には遺産分割案の添付が求められており、家庭裁判所は、添付された遺産分割案が未成年者の利益を害する結果とならないかどうか(換言すれば、未成年者が取得する遺産が法定相続分を下回ることがないかどうか)を審査した上で特別代理人を選任します。つまり、特別代理人の選任が必要なケースでは、未成年者の法定相続分を下回ることがない遺産分割案を事前に確定させておかなければならないことになります。ご自身で裁判所を納得させられるだけの遺産分割案を作成できないと考えるときは、特別代理人の選任審判申立てを含めて弁護士に依頼するのが簡便です。当事務所では、初回の法律相談料はいただいておりませんので、まずはお気軽に法律相談を受けていただき、弁護士に依頼するかどうか、弁護士に依頼するとして当事務所をお選びいただくかどうかの判断材料にしていただければ幸いです。