遺言の種類とメリット・デメリット

遺言書を作成しようと考えたとき、いくつかの種類があることからどれにしようか迷うことがあるかもしれません。今回は、遺言の種類とそれぞれのメリット・デメリットについてご説明いたします。

遺言の種類

遺言には、以下4つの種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 危急時遺言

このうち「危急時遺言」とは、遺言者に病気や怪我、あるいは船舶遭難によって死が差し迫っており、①から③の通常の遺言を作成することができない危急時においてなされるものであり、通常の遺言とは異なるイレギュラーなものになります。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言とは、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、捺印して作成されるものです。最大のメリットは遺言の中で最も簡単に作成することができるという点です。公正証書遺言や秘密証書遺言と異なり、遺言者だけが関与するため手数料もかかりません。

しかし、このメリットの裏返しがデメリットになります。関与者が遺言者1人だけということは、紛失したり遺言者の死後に発見されなかったりするリスクがあるということ。遺言をいち早く発見した者に破棄や隠匿されるリスクもありますし、作成が容易であるということは偽造・変造されやすいということでもあります。

民法は、遺言の発見者に対し、遺言者の死後、遅滞なく家庭裁判所に提出して遺言の検認手続をすることを定めています。また相続人が遺言書を偽造ないし変造することは欠格事由として規定されており、そのような行為をした相続人は、相続人としての資格を失うことになります。このように、民法は、遺言書の偽造・変造・隠匿をできる限り防ごうともしています。しかし、それでも、発覚するリスクを覚悟の上で偽造・変造・隠匿をする者がいることも否定できませんから、網羅的にリスクを除去することはできません。また、自筆証書遺言を選択した遺言者は、自身の死後に遺言書が発見されないリスクが依然として残ることについては覚悟しておくべきでしょう。

遺言には厳格な要式が定められており、それらを1つでも欠くと無効となってしまいます。自筆証書遺言を選択した遺言者は、せっかく作成した遺言に不備があり、無効になるリスクも覚悟しておくべきです。さらに、自筆証書遺言は、その作成時に遺言者だけしか関与せず、証人が立ち会うことがないため、遺言者の死後、遺言者は遺言作成時に十分な判断能力がなかったとして、遺言者の遺言能力が争いになるケースもあります。自筆証書遺言は、ペンと紙さえ用意すれば遺言者1人だけで簡便に作成することができます。しかし、上述した様々なデメリットがあるため、弁護士が遺言書を作成するときは、通常は自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を選択することになります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言とは、公正証書の形式で作成される遺言のことです。遺言書の作成依頼を受けた弁護士は、通常は公正証書遺言を選択します。弁護士は、依頼者から全ての財産のリストの提供を求め、どの財産を誰に相続させたいかを確認し、遺言書の原案を作ります。依頼者の確認を受けて遺言内容を確定したら、公証人に事前にFAXし、公証役場に行く日を決めます。弁護士が依頼者と一緒に公証役場に出向くと、公正証書遺言が完成しています。公証人は、遺言者の本人確認をした後、公正証書遺言を全て読み上げ、その内容の公正証書遺言を作成することに間違いがないかどうかを確認し、その場で遺言者、弁護士、証人に署名捺印させ、完成した公正証書遺言をその場で交付します。なお、証人は、公証人に事前に頼むと、数千円程度の日当を支払うことを条件に公証人が用意してくれます。弁護士に依頼して公正証書遺言を作成する最大のメリットは、弁護士と公証人の2人が遺言者の意思を確認した後に遺言書を作成することから、遺言が無効になるリスクがまずないという点です。

なお、遺言者が身体が不自由であったり、入院している場合等、公証役場に行くのが難しかったりする場合は、出張費を負担することで、公証人に自宅や病院への出張を依頼することもできます。

また、公正証書は、遺言者が1部(正本)、弁護士が1部(謄本)、公証人役場に1部(原本)ずつ保管されることになり、紛失や隠匿のリスクがないということもメリットといえます。しかも、全国規模の検索システムが稼働していますので、相続人は、遺言者の死後、最寄りの公証役場に行くだけで公正証書遺言が作成されているかどうかを確認することができます。

なお、弁護士に依頼せず、自分で公証役場に行って公正証書遺言を作成してもらうこともできます。しかし、弁護士に依頼すれば、誰にどの財産を相続させるべきかについて弁護士に相談することができますが、自分で直接交渉役場に行く場合は、公証人はそのような相談には乗ってくれませんので、遺言の内容は自分自身で事前に確定させておく必要があります。公正証書遺言を作成する際の弁護士費用は、遺言の内容や遺産の額にもよるもののおおむね10万円程度ですので、まずは弁護士相談を受けてみられることをお勧めします。当事務所では初回の法律相談料をいただいておりませんので、よろしければ当事務所にお電話いただければ幸いです。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

最後に秘密証書遺言ですが、これは通常は利用されません。秘密証書遺言とは、公証人や証人にも遺言内容を知られたくないとき、封印した遺言書を公証人と2人以上の証人の前に提出し、遺言者・証人・公証人が封紙に署名捺印することで作成します。

秘密証書遺言のメリットは、自筆証書遺言のように全文を自筆で作成する必要がなく、パソコンで作成しても無効にならないという点です。しかし、秘密証書遺言ではなく公正証書遺言にしたところで、公証人には守秘義務がありますし、2人の証人のうち1名は弁護士ですから、やはり守秘義務があります。残りの証人は公証人が用意した人で、遺言者にとっては利害関係のない見ず知らずの第三者です。公証人としても、元々信頼できる人に秘密を洩らさないことを固く約束させた上で証人になることを依頼しますので、証人を通じて秘密が漏れるリスクは現実的には存在しないと思われます。