遺留分侵害額請求されたときの対処方法

遺言によって遺留分を侵害された相続人から遺留分減殺請求権の行使を受けたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。

対象方法①~価格賠償の意思表示をする

遺留分を有する相続人が遺留分減殺請求権を行使すると、対象財産の全てについて減殺の効果が発生します。
遺留分減殺請求の対象財産とは、①遺贈、②死因贈与、③生前贈与です。まず、遺贈が減殺され、遺贈では足りないときに死因贈与が減殺され、遺贈及び死因贈与でも足りないときに生前贈与が減殺されます。遺留分減殺行為となる複数の贈与が存在するときは、新しい贈与から減殺されますが、遺贈が減殺の対象となるときは、先後関係で決めるのではなく、全ての遺贈が遺留分減殺請求の対象となり、その目的物の価額に応じて按分されます。つまり、遺留分減殺請求権の対象となる遺贈が複数件あると、遺留分を有する相続人が遺留分減殺請求権を行使した瞬間に対象となる全ての遺贈が遺留分を侵害する限度で失効し、遺留分を有する相続人の所有物となります。
具体例で説明します。被相続人の法定相続人が子ABの2名であり、被相続人は子Aに全ての相続財産を相続させる旨の遺言を作成していたとします。子Bの法定相続分は2分の1ですから、遺留分は4分の1(法定相続分の2分の1)となります。このとき、子Bが遺留分減殺請求権を行使すると、その瞬間に、子Bは、全ての相続財産の4分の1の持分権を取得することになるわけです。
相続財産が不動産のときは、名義変更手続を経て、登記名義の4分の3が子A、4分の1が子Bの名義となります。
このように、遺留分を有する相続人が遺留分減殺請求権を行使すると、その瞬間に相続財産は遺留分割合を持分割合とする共有物となるため(これを「現物返還の原則」といいます)、以後は共同所有者として仲良く共有物を管理していくか、それが気に入らなければ共有物分割訴訟を起こして共有物の分割を求めることになります。
しかし、相続財産が共有物になると、以後は非常に面倒な共有関係が発生するため、遺留分請求権の行使を受けた側(上記の設例では子A)が希望すれば、相続財産の全部又は一部について価格弁償をする旨の意思表示をすることができます。遺留分減殺請求権の行使を受けた対象財産のうち、どれを価格賠償し、どれを現物返還するかは、遺留分減殺請求権の行使を受けた側が自由に選択することができます。
したがって、遺留分減殺請求権の行使を受けた側の対処方法としては、複雑な共有関係の発生を防ぐため、価格賠償の意思表示をし、お金による解決をめざすことになるのが一般的です。
なお、遺留分を有する相続人としても、遺留分減殺請求権を行使したことによって複雑な共有関係が発生することは望まない場合が多いでしょう。しかし、現行民法は、価格賠償の選択権について遺留分減殺請求権の行使を受けた側のみに与えたことから、遺留分を有する相続人は、希望しなくても現物返還を受けざるを得ませんでした。
そのため、2019年7月1日から施行される民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律は、現物返還を原則とする遺留分減殺請求権を見直し、遺留分侵害額請求権という金銭債権を創設しました。これにより、2019年7月1日以降に発生する相続に関しては、遺留分を請求する側・請求される側にかかわらず、現物返還ではなく価額賠償で対処することになります。

対象方法②~価格の評価で争う

遺留分減殺請求権を行使された側が価額賠償を選択したとき、次に問題となるのは、遺留分を算定するための財産をいくらと評価するかということです。
そもそも、遺留分を算定するための財産は、「被相続人が相続開始の時(死亡時)に有していた財産全体の価額+贈与した財産の価額-債務の全額」を基礎として計算します。
そうすると、遺留分を算定するための財産のうち、まず「被相続人が相続開始の時(死亡時)に有していた財産」の評価額が問題となります。具体的には、相続財産の中に不動産や非上場株式があったとき、遺留分減殺請求権の行使を受けた側としては、できる限り低い金額で評価されたほうが得になります。不動産の評価額は、①固定資産評価額(時価のおよそ7割程度)、②相続税評価額(時価のおよそ8割程度)、③公示価格(ほぼ時価に等しい)、④基準値標準価格(ほぼ時価に等しい)、⑤時価の5種類があります。時価との開きが大きい、固定資産税評価額を基準とすることは受けられないことが多いですが、「相続問題だから相続税評価額で算定しましょう」と言ってみると意外にすんなり受け入れられるときがあります。また、遺留分を有する相続人が時価評価にこだわったときは、複数の不動産業者から査定書を入手し、その中から数か所を選んで提出するという手法をとることもあります(なお、単に時価といっても、①取引事例比較法、②収益還元法、③原価法の3種類が存在することから、これらを併用して時価が算定されることになります)。また、非上場株式の査定方法についても、①純資産方式、②配当還元方式、③類似業種比準方式、④混合方式、④国税庁長官の財産評価基本通達による方法の4種類が存在します。
つぎに、遺留分を算定するための財産のうち、「贈与した財産の価額」が問題となります。具体的には、遺留分を有する相続人が特別受益(被相続人からの生前贈与)を受けているときは、その分だけ遺留分侵害額が減ることになります。したがって、遺留分減殺請求権の行使を受けた側としては、遺留分を有する相続人に特別受益が存在すること、そして存在する場合には、その特別受益が多額にわたることを主張することができるかどうか、検討することになります。 

困ったら弁護士相談を

このように、遺留分減殺請求権(2019年7月1日以後の相続では遺留分侵害額請求権)の行使を受けた側が取り得る方法としては、価格賠償を選択した上で遺留分権利者に支払う金額をできる限り低額にするように最善の努力をすることが考えられます。しかし、効果的な対応をするためには専門的な知識が必要ですので、まずは弁護士に相談し、その助言を求めることが重要です。
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