【相続手続の流れについて】タイムスケジュールは忙しい

代表社員弁護士 伊藤 弘好 (いとう ひろよし)

被相続人が死亡したとき、その瞬間から相続手続が動き出します。相続手続には、それぞれタイムスケジュールがあります。それぞれのタイムスケジュールを守って行動しなければ重大なペナルティを受けることがあります。

死亡届の提出と火葬埋葬許可証の受領

被相続人が死亡すると、被相続人の死亡を確認した医師から、遺族に対し、医師の署名捺印のある「死亡届」が交付されます。遺族は、被相続人の死亡を知った日から7日以内に死亡届を市区町村役場に提出しなければなりません。死亡届を受理した市区町村役場は、遺族に対し「火葬許可証」を交付します。つまり、死亡届を提出しないと火葬許可証をもらうことができず、遺体を火葬することができませんので、法律上は7日以内に死亡届を提出しなければならないものとされていますが、実際はすぐに提出することになります。
火葬許可証を火葬場に示して遺体を火葬すると、火葬場が火葬許可証に判子を押してくれます。火葬場の判子が押された火葬許可証は、埋葬許可証となります。埋葬許可証を墓地の管理者に示さなければ、遺骨を墓地に納骨することができません。

故人の保険や免許証等の返納

被相続人が死亡して2週間以内に、世帯主の変更、年金や健康保険の資格喪失届の提出を行います。また、死亡後速やかに被相続人の運転免許証の返納等を行います。

3か月以内に相続放棄を希望する人は相続放棄をすること

法定相続人の中で相続をしたくない人は、被相続人が死亡したことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしなければ、相続放棄をすることができなくなります。
相続放棄をすると、法律上は被相続人の死亡日にさかのぼって相続人ではなかったことになります。相続放棄をすると、財産の取得を諦める代わりに借金の負担を免れることができます。相続放棄の申述を受理してくれる家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。遠方の場合は、相続放棄の申述書を郵送することもできます。
なお、相続放棄の申述をするのが被相続人の配偶者ないし子ではなく、父母等の直系尊属や兄弟姉妹のときは、添付書類として、被相続人が生まれてから死ぬまでの全ての戸籍が必要です。被相続人が本籍地を転々としている場合には、各本籍地の市区町村役場に対し、手数料を添えて郵送で申請しなければならず、非常に手間がかかります。弁護士費用はかかりますが、最初から弁護士に一任するのもひとつの方法です。当事務所では、初回相談料は無料とさせていただいておりますので、まずはお気軽にご相談ください。もちろん、その際は、当事務所にご依頼いただく際の弁護士費用がいくらかについても明確にお伝えいたしますので、当事務所に依頼するかどうかについて、その場でも構いませんし、持ち帰ってご家族で相談した上でお決めいただいても構いません。

4か月以内に所得税の準確定申告をすること

確定申告は、通常、1月1日から12月31日までの所得について、翌年の3月15日までに行います。しかし、確定申告をしなければならない人が死亡したときは、その相続人は、死亡したことを知った日の翌日から数えて4か月以内に被相続人の所得について準確定申告をしなければなりません。この準確定申告は、全ての相続人が申告書に連署して行いますが、相続人の足並みがそろわず他の相続人の署名がもらえないときは、申告書に他の相続人の氏名を記載して税務署に提出し、他の相続人に対しては準確定申告をしたこと及びその申告内容を通知すればよいものとされています。

10か月以内に相続税を申告すること

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から数えて10か月以内です。相続税には基礎控除(3000万円+法定相続人の人数×600万円)がもうけられています。相続税の申告は、基礎控除を超える相続財産があるときに必要です。例えば、相続人が妻と3人の子のときは、(3000万円+4人×600万円=5400万円)となりますので、相続財産が5400万円以内に収まれば原則として相続税の申告は不要です。
なお、10か月以内に遺産分割協議が完了しなければ、法定相続分に応じて各相続人の相続税を仮に計算して相続税申告書を作成し、仮計算で算出した相続税を仮納付します。遺産分割協議の成立後(話し合いがまとまらなければ、相続財産に関係する調停や審判、裁判が全て確定した後)、税務署に対して相続税の更正の請求を行い、各相続人は仮納付した相続税との過不足の調整を受けます。

1年以内に遺留分侵害額請求権を行使すること

被相続人が遺言を書かずに死亡したときは、相続財産は、相続人全員の遺産分割協議によって、誰が何を取得するのかを決定します。これに対し、有効な遺言が存在するときは、相続財産は遺言に沿って分配されることになります。しかし、遺言によって冷遇される相続人を保護するため、民法は遺留分侵害額請求権をもうけました。これは、どのような内容の遺言があったとしても、一定の範囲の法定相続人であれば最低限の取り分を請求できる権利を認めるものです。
ただし、遺留分侵害額請求権は、遺言によって確定しつつある相続財産をめぐる法律関係について、法定相続分の2分の1(相続人が直系尊属のみのときは3分の1)の限度でやり直させる強力な権利ですので、「相続の開始」及び「遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったこと」を知った時から1年以内に権利行使しなければならないという期間制限がもうけられています。

タイムスケジュールを徒過しないように弁護士に相談しましょう

これまでご説明したとおり、相続手続には厳格なタイムスケジュールがもうけられており、それを徒過すると重大なペナルティを受けることがあります。相続財産が多額に及んだり、相続人間の協議が調いそうになかったりするときは、早い時期に弁護士に相談し、今後の見通しを確実なものにしておくことが重要です。当事務所の初回の法律相談料は無料ですので、相続手続についてお困りの際はお気軽にご相談ください。