【特別縁故者】相続人が誰もいないときはどうする?

相続人が誰もいないとき、相続財産はどうなるのでしょうか?相続人が誰もいないときとは、被相続人に推定相続人が誰もいないか、かつて推定相続人がいたものの全て死亡し代襲相続者もいないときをいいます。 

相続人が行方不明ないし生死不明なとき

相続人の中に行方不明者がいるときは、特別利害人(行方不明者の配偶者、相続人にあたる者、債権者等)は、不在者財産管理人の選任審判の申立てをし、選任された不在者財産管理人が行方不明者である相続人の代わりに遺産分割協議に参加します(不在者財産管理人に選任されただけでは処分行為をする権限はありませんので、遺産分割協議や遺産分割調停を成立させるには、成立前に家庭裁判所の許可を得ておかなければなりません)。また、行方不明者である相続人が唯一の相続人であるときは、不在者財産管理人が、行方不明者である相続人が現れるまで相続財産を含む行方不明者の財産を管理することになります。
これに対し、相続人が行方不明な状態(生死不明な状態)が7年間続いたとき又は死亡の原因となるような危難に遭遇してから1年間その生死が明らかでないときは、利害関係人(行方不明者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人等)は、失踪宣告の申立てをすることができます。失踪宣告が認められると、7年の期間満了時ないし危難が去った時に死亡したものとみなされます。失踪宣告によって死亡したものとみなされると、代襲相続が開始されることになります。

相続人がいないときはどうなる?

相続人がいるかどうかが不明なときは、まずは相続財産管理人が選任されます。相続財産管理人は、相続財産の管理業務を行いながら、それと並行して相続人を捜索します(3回の公告によって捜索することから、少なくとも1年以上の捜索期間を要します)。相続人が存在しないことが確定すると(3回目の公告期間の満了後)、その日から3か月以内に特別縁故者による請求があるときは、家庭裁判所は、特別縁故者に対し、相続財産の全部または一部を分与し、残余財産があるときは国庫に帰属させます。実務上は、特別縁故者として財産分与を請求しようと考えている者(例えば、被相続人と内縁関係にあった者)が、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任審判申立てをすることになります。

特別縁故者とは?

民法958条の3は、①被相続人と生計を同じくしていた者、②被相続人の療養看護に努めた者、③その他被相続人と特別の縁故があった者に対し、相続財産の全部または一部の分与を認めました。①ないし③に該当するかどうかは全て裁判所の判断によります。

①被相続人と生計を同じくしていた者としては、内縁の配偶者、事実上の養子、事実上の養親、相続放棄をした被相続人の子、子の妻、おじおばなどが認められています。なお、内縁の配偶者については、重婚的内縁関係にあるとき(他の者と法律婚にあるのに、被相続人の内縁の配偶者としてふるまっていたときなど)は特別縁故者とは認められないとした複数の裁判例があります。

②被相続人の療養看護に努めた者としては、被相続人の療育看護に特に献身的に尽くした親族、隣人、知人等が認められています。なお、家政婦や看護師などの正当な報酬を得て療養看護していた者は、原則として特別縁故者とは認められないものの、受領した報酬を超えて献身的に尽くしたといえるときに特別縁故者と認めた裁判例があります。

③その他被相続人と特別な縁故があった者は多岐に及びますが、一応の判断基準としては、療育看護に準じる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的な密接な交渉があり、相続財産の全部または一部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうといえるかどうか(仮に被相続人が遺言を作成していたとしたら、その者に遺贈していたといえるかどうか)となります。

また、法人や法人格のない団体も特別縁故者となることができます。被相続人が自己の私財を投じてその発展を願っていた学校法人や福祉施設などが特別縁故者として認められたケースもあります。

なお、特別縁故者が被相続人と縁故を持った時期は、被相続人の死亡時に限定されません。被相続人の死亡時点で特別の縁故がなくても、被相続人の生前の一定時期に特別な縁故(過去縁故)があったり、被相続人の死後に特別な縁故(死後縁故)があったりするケースであっても、裁判所の判断で特別縁故者と認められるときがあります。

また、特別縁故者が財産分与の申立てをする前に死亡したときは、特別縁故者の相続人は特別縁故者たる地位を相続しないと考えられています。

共有物について

民法255条は、共有者の1人が死亡して相続人がいないときは、死亡した共有者の持分は他の共有者に帰属するものとしています。そのため、相続財産の中に共有物があるとき、民法のこの規定と特別縁故者の規定のどちらが優先して適用されるのかが争いになっていました。この点について、最高裁判所平成元年11月24日判決は、特別縁故者の規定を優先させるとの判断を示しました。そのため、民法255条は、共有物が特別縁故者に分与されないことが確定した時点で初めて適用されることになります。

特別縁故者の課税関係

特別縁故者が財産分与を受けたときは、被相続人から遺贈によって財産を取得したものとみなされ、相続税が課税されることになります。相続税の申告期限は、財産分与を受けた日の翌日から数えて10か月以内です。なお、その場合の取得価額は特別縁故者がその財産を取得することが決まった時点の価額となります。また、相続税の基礎控除ですが、特別縁故者は法定相続人ではないことから法定相続人の人数加算はなされず、3000万円のみとなります。また、遺贈とみなされることから、遺贈の場合の2割加算も適用されます。
 

困ったら弁護士に相談を

特別縁故者として財産分与を受けるためには、相続財産管理人の選任を申し立てた上で1年以上の捜索期間が満了するまで待機し、特別縁故者であることを主張立証しなければなりません。特別縁故者として認められるかどうかは裁判所の判断次第ですし、特別縁故者として認められたとしても相続財産の全部が認められないこともあります。そこで、被相続人は、残された人が困らないように遺言を作成しておくべきです。当事務所では初回の法律相談料はいただいておりませんので、相続関係でお困りの際はお気兼ねなく当事務所までご連絡いただければと思います。