相続財産を調査する方法

代表社員弁護士 伊藤 弘好 (いとう ひろよし)

遺産分割をするためには、相続人と相続財産を漏れなく調査し、全ての相続人と相続財産を対象にしなければなりません。今回は相続財産の調査の方法についてご説明いたします。

不動産の調査方法

被相続人が固定資産税の納税通知書を保管していれば、納税通知書に添付されている課税資産の明細欄を確認することが最も確実です。納税通知書の課税資産の明細書には、被相続人がその市町村内で所有していた全ての不動産が記載されていることから、1通の納税通知書を入手できればその市町村内の全ての不動産を確認することができます。また、固定資産税の納税通知書は納税者の住所地に郵送されることから、被相続人が他の市町村に不動産を所有していたとしても、各納税通知書を確認することで被相続人が所有する不動産を漏れなく把握することができます。

しかし、被相続人が固定資産税の納税通知書を保管していなかったときは、被相続人が不動産を所有していると思われる市町村の固定資産税の担当部署(通常は固定資産税係。東京都は都税事務所)に片っ端から連絡し、名寄帳を入手して確認する必要があります。名寄帳とは、その市町村内に存在する納税義務者が所有する全ての不動産が記載されたリストの名称のことです。相続人は、戸籍謄本等によって相続人であることを証明すれば、被相続人の名寄帳を発行してもらうことができます。ただし、固定資産税の納税通知書も名寄帳も、その年の1月1日現在の登記情報に基づいて作成されることから、1月1日から被相続人が死亡するまでの間に被相続人が不動産を売買していると漏れが発生します。そのため、1月1日から被相続人死亡日までの間に購入した不動産について売買契約書や登記関係書類が保管されていないかを確認し,また,全ての不動産について法務局で登記簿(正式名称は「全部事項証明書」です)を取って1月1日から被相続人死亡日までの間に売却されていないかどうかを確認しておく必要があります。

また、相続財産に不動産が含まれているときは、原則として現場に行って不動産の現況を確認し、携帯電話等で写真を撮影しておくべきです(現地に行けないときは、グーグルマップで確認することもできます)。現場を確認した際に未登記建物を発見したときは、固定資産課税台帳の家屋補充台帳に登録されているかどうかを確認したほうがよいでしょう。なお、登記簿の地番と住居表示は異なり、住居表示が分からなければ地図で対象不動産を探すことができません。法務局では管内のブルーマップ(公図をゼンリン社の住宅地図に落としたもの)が備え付けられているため、それを見て不動産の住居表示を確認しておくべきです。国立国会図書館には全国のブルーマップが所蔵されており、ここで確認することもできます。ちなみに、法務局では公図と建物図面を入手することもできます。公図を見れば、土地の位置形状を確認することができ建物図面を見れば建物の位置形状を確認することができます。そして、建築確認申請書があれば、建物の配置図や敷地利用図が添付されていることから、建物の概要把握に非常に役立ちます。

有価証券等の調べ方

有価証券には、国債、地方債、社債、上場株式、非上場株式等があります。また、被相続人名義でなくても、被相続人が特定の相続人に資金提供して特定の相続人名義で購入したものがある場合、生前,被相続人が管理していたものであれば相続財産に含まれますし、特定の相続人が生前贈与を受けたものであれば特別受益となります。
有価証券の販売会社は、証券会社、銀行、ゆうちょ銀行、生命保険会社、損害保険会社、労働金庫、信用金庫など多岐にわたります。被相続人が資料を保管していなければ、被相続人が取引をしていた可能性がある各社に個別に連絡して取引明細書を発行してもらう必要があります。

なお、被相続人が取引をしていた証券会社等があるときは、様々な郵送物が届くことが多いため、被相続人の死後1年ほどは被相続人宛に届く郵便物に注意し、郵便物を送付した証券会社等があれば連絡を取って被相続人の取引の有無及び内容を確認する必要があります。

預貯金の調べ方

まずは被相続人が保管していた預貯金の通帳を確認し、取引先の金融機関を発見することが先決です。過去5年分の通帳が残されていないときは、取引支店に赴き、過去5年分の入出金履歴を発行してもらい、おかしな取引(他の相続人に対する生前贈与等が疑われるもの。とりわけ死亡の直前直後の出金は、他の相続人の作為が疑われることから精査すべきです)がないかどうかを確認すべきです。また、被相続人が保管していた通帳の中に家族名義や他人名義のものがあれば、名義借りの可能性があります。預金は名義人ではなく出捐者(実際にお金を出した人)のものですので、他人名義であったとしても被相続人が出捐し、被相続人が管理していたものであれば相続財産となります。さらに、貸金庫や自宅の金庫があれば、それらを開けて、被相続人の財産の有無を確認する必要があります。

消極財産の調査

相続財産を調査する際に忘れてはならないのは、消極財産(すなわち借金)の調査です。口座を開設している金融機関に対しては、必ず借入金の有無を確認しておくほか、登記簿を見て抵当権の設定の有無を確認し、抵当権が設定されているときは必ず抵当権設定者(登記簿に書いてあります)に連絡し、残債務の有無を調査する必要があります。被相続人が他人の債務を連帯保証しているときは、被相続人自身の負債以上に資料が保管されておらず、調査が困難となることが予想されます。しかし、連帯保証債務も相続対象となりますので、主債務者が弁済できないときは予想外の負債を負うリスクがあります。さらに、身元保証や借家契約の連帯保証がどうなるかについても意識しておくべきです。このうち身元保証は被相続人の死亡によって解消されますが、借家契約の連帯保証は被相続人の死亡によっては解消されず、借家契約の更新後も継続されますので、賃貸人に対して速やかに保証契約の解消を申し入れる必要があります。

困ったら弁護士に相談を

このように相続財産の調査は多岐に及びます。漏れがあると、せっかく遺産分割協議を成立させたとしても、漏れた部分は遺産分割協議の効力が及ばないことから、再び漏れた部分について遺産分割協議をやり直さなければなりません。また、相続財産の調査は入口にすぎず、相続財産の調査が終了後に最も重要な財産評価をしなければなりません。そのため、弁護士に相談することが効果的なときもあります。当事務所では初回の法律相談をいただいておりませんので、お困りのときはぜひ当事務所までご相談ください。