相続に不満があるときは弁護士に相談
被相続人が亡くなってしばらくすると、相続人が集まって遺産分割をすることになります。その際、全ての相続人が完全に納得することは難しく、多かれ少なかれ不満が出るものです。問題は、その不満が法的に解決可能なものなのかどうかという点です。
遺言があれば遺言に従います
まず、被相続人が遺言を作成していたときは、その遺言が有効なものである限り、遺産分割は遺言の内容に沿って行われます。ただし、全ての相続人が合意すれば、遺言の内容を無視して遺産分割協議をすることができます。
遺言があっても遺留分侵害額請求はできます
相続財産は元々は被相続人の財産ですから、被相続人が自由に処分することができるのが原則です。
しかし、遺言によって不利益を受ける相続人を救済するため、民法は遺留分侵害額請求権をもうけています。
遺留分侵害額請求権とは、遺言の内容が特定の者にのみ有利な場合であっても、一定の範囲の法定相続人であれば最低限の取り分を確保することができるという制度です。具体例で考えてみます。相続人が、被相続人の妻と3人の子であったとき、妻の法定相続分は2分の1、3人の子の法定相続分は6分の1ずつとなります。被相続人が「長男に全ての財産を相続させる」との遺言を作成したとき、妻の遺留分は4分の1、長男を除く2人の子の遺留分は12分の1ずつとなり、妻と、長男を除く2人の子は、遺言によって全ての相続財産を相続した長男に対し、各自の遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができます。
ただし、遺留分侵害額請求権は、遺言によって確定したはずの相続財産をめぐる法律関係をやり直すものであるため、無制限に認めると法的安定性を害する結果になります。そこで、「相続の開始」及び「遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったこと」を知った時から1年以内に行使しなければならないという期間制限が定められています。
遺言書を破棄すると相続人資格を失います
遺言書を発見したときは、開封せずに家庭裁判所の検認を受けなければなりません。封緘されている遺言書を開封してしまったとしても、それを正直に申告して改めて家庭裁判所の検認を受ければ通常は問題にはなりませんが、破棄してしまうと相続人資格を失ってしまいます。遺留分侵害額請求権も行使することができなくなってしまいますので、どれほど自分にとって不利益な遺言であったとしても、絶対に破棄してはいけません。
なお、発見した遺言書が公正証書遺言のときは、公証役場に原本が保管してあり、かつ、遺言検索システムによって全国どこの公証役場からでも公正証書遺言の有無を検索することができるため、破棄しても無意味です。
遺言がなければ遺産分割協議をします
遺言がないときは、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの相続財産を取得するのかを決めることになります。その際の基準となるのが「法定相続分」です。法定相続分とは、民法が被相続人と相続人との親族関係の濃さに応じて定めたものです。
具体的には、被相続人に妻と子がいれば、妻と子が法定相続人となります。その法定相続分ですが、妻は2分の1、子は残りの2分の1を頭割りすること(子が3人いれば6分の1ずつ)になります。
つぎに、被相続人に子が1人もいなければ、直系尊属(まずは被相続人の親、親が死亡していれば祖父母、祖父母が死亡していれば曽祖父母、というように、上の世代に順次さかのぼります)が法定相続人となります。その法定相続分ですが、妻は3分の2、直系尊属の法定相続分は残りの3分の1を頭割りすることになります。
最後に、被相続人に子も直系尊属も1人もいないときは、兄弟姉妹が法定相続人となります。その法定相続分ですが、妻が4分の3、兄弟姉妹が残りの4分の1を頭割りすることになります。
なお、先ほど遺留分侵害額請求権についてご説明しましたが、法定相続人が兄弟姉妹のときは、兄弟姉妹には遺留分侵害額請求権はありませんので、「妻に全ての相続財産を相続させる」という遺言を作成しておけば、妻に全てを相続させることができます。
特別受益や寄与分もあります
法定相続人の誰かが被相続人から生前に贈与等の利益を得ていたときは、「特別受益」として相続財産に持ち戻すように求めることができます。具体的には、土地をもらった、自宅の建設資金の援助を受けた、医学部などの高額な学費を出してもらった、多額の結婚資金の援助を受けた、生活費を出してもらった場合などです。ただし、被相続人は、生前ないし遺言によって持ち戻し免除の意思表示をすることができます。有効な持ち戻しの免除の意思表示が認められると、特別受益は遺産分割との関係では存在しなかったものとして扱われます(特別受益を受けた法定相続人の貰い得となります)。
また、法定相続人の誰かが被相続人のために特別の寄与をし、それによって相続財産が維持または増加したときは、特別の寄与をした法定相続人は寄与分相当額を別枠で取得することができます。
具体的には、無報酬またはこれに近い状態で家業に従事した、被相続人の事業に出資した、被相続人の療養看護に従事したことで被相続人が医療費ないし介護費の支出を避けることができた場合などです。
ただし、特別受益や寄与分は、法定相続人間で深刻な争いに発展することが多く、遺産分割協議での解決を期待することはできません。多くのケースでは、家庭裁判所の調停や審判で解決することになるでしょう。
相続で困ったときは弁護士に相談を
相続に不満があるとき、その不満が法的に解決可能かどうかについての判断要素について、これまでざっとご説明してきました。しかし、相続をめぐる法律関係は複雑であり、また極めて多岐に渡ります。具体的な事情によっては結論が大きく異なることもありますので、弁護士に相談し、ご自身を取り巻く法律関係を整理することをお勧めします。
当事務所は、初回の法律相談料を無料とさせていただいておりますので、お気軽にご相談ください。皆様からのご予約のお電話をお待ちしております。