遺産分割調停

遺産分割協議で、祭祀承継者が遺産から将来の祭祀費用を取得することができた事例

依頼者
60代男性
亡くなられた方 母親
相続人 長男、長女、次女、三女
財産(遺産) 不動産(土地・建物),預金,有価証券

ご依頼の背景

母親を亡くされた長男である依頼人から、相続人である妹たち(父親はだいぶ以前に亡くなっていました。)との遺産分割についての話し合いがまとまらないと相談がありました。 遺産としては、不動産(土地・建物)、預貯金、有価証券があり、依頼人も他の相続人も基本的には法定相続分どおりの分割ができればよいとの考えでした。 しかし、依頼人は、長男としてご両親の供養をしっかりとしたいというご希望を有しており、主にそのための費用の点について遺産分割の話が進んでいないとのことでした。

依頼人の主張

依頼人の主張は、 ①長男である自分がお墓等を引き継ぐ、すなわち「祭祀承継者」となりたい。 ②将来の供養(祭祀)にかかる費用として、墓石の管理費やお寺へのお布施、その他花代等を遺産から出してもらいたい。 ③その他の遺産は法定相続分としたい。 というものでした。①に関しては特に反対する相続人はいませんでしたが、②については他の相続人が反対しているとのことでした。

サポートの流れ

法律上、お墓や仏壇などを引き継ぐ人のことを「祭祀承継者」といい、先祖の供養など(祭祀)は主に祭祀承継者となった人が行っていくこととなります。ところが、祭祀に必要な費用については相続財産とは別であり、祭祀承継者は自らの費用で可能な範囲で祭祀を行えばよく、遺産や他の相続人に対して祭祀費用の負担を求めることはできないというのが法律上の基本的な考え方です。そのため、仮に裁判になった場合には、依頼人の主張は認められない可能性が高いものでした。 しかし、遺産分割協議や遺産分割調停では、相続人の合意が得られれば、法律と異なる解決を行うことも可能です。そのため本件では、遺産分割調停を行い調停委員に間に入ってもらいながら、依頼人の供養への想いと具体的な計画を丁寧に主張することで、祭祀費用を遺産から支出することへについて他の相続人の理解を得るという方針でサポートを行いました。

結果

調停の当初は、遺産から祭祀費用を支出することに対する他の相続人の理解はやはり得られませんでした。しかし、調停を何回か重ね、依頼人の供養の計画について他の相続人の意見も取り入れながら話し合いを重ねたことで、他の相続人の態度も軟化し、最終的には無事に祭祀費用を遺産から支出することの合意を得ることができました。 このように、法的に認められないため裁判では実現することが難しい希望であっても、調停ではうまく叶えられる可能性もあります。本件でも、法的に無理だからと諦めることなく、粘り強く当事者間での合意形成を促していくことで、依頼人の希望を叶えることができました。

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